久保田香里『きつねの橋』頼光四天王のひとり・貞道を主人公とした歴史ファンタジー刊行!着想を得たエピソードとは?

『きつねの橋』(久保田香里 作、佐竹美保 絵)
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2019年9月11日、 株式会社偕成社より『きつねの橋』(久保田香里 作、佐竹美保 絵)が刊行されます。

平安ファンタジー『きつねの橋』

時代は平安時代中期。鬼退治で知られる源頼光(みなもとのよりみつ)四天王のひとり、貞道(碓井貞光)が主人公の歴史ファンタジーの児童書です。

貞道は頼光の郎等(従者)となりますが、その後妖怪の白きつね・葉月(はづき)と出会って互いに助け合うようになる……というストーリー。

描かれるのは貞道が相模から京都へやってきて間もない若者時代の話。頼光四天王というと渡辺綱、坂田金時、碓井貞光(平貞道)、卜部季武の4人ですが、中でも鬼退治エピソードではあまり目立たない貞道に焦点が当てられます。

作者の久保田香里さんは岐阜県出身、長野県在住の作家。代表作『氷石』(くもん出版)をはじめ、作品はいずれも古代を舞台にした物語。 古事記』『日本書紀』『続日本書紀』『今昔物語 といった古典作品を熟読することが趣味だという久保田さん。この話を思いついたのも、『今昔物語』の 「頼光の郎等ども、紫野に物見たる語(こと)」 を読んだことがきっかけだそう。

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着想を得た『今昔物語』のエピソードとは?

久保田さんが物語の着想を得たと語っているのが、『今昔物語集』の巻第28「頼光郎等共紫野見物語(よりみつのらうどうどもむらさきのにものみをみること)第二」のエピソード。

こんなお話です。

賀茂祭の第2日、平貞道、平季武、坂田公時の三人は行列を見物しようと計画を練ります。顔を見られることなくなんとか見物したい三人は女車のようにして見物してはどうか、と考え、粗末な紺の水干の袴を着たまま車に乗り込みました。

紫野に向けて進みますが、車に乗ったことがほとんどないような三人なので、車中では振り回されて互いにぶつかり合い転がり、道中は大変な思いをします。ずっと揺られ続けた三人は車酔いし、嘔吐し烏帽子も落としさんざんなありさま。

ちなみに烏帽子を落とすとはどういうことを意味するかというと……

平安貴族、冠を取った姿を晒すのはめちゃくちゃ恥ずかしい!今とは違う平安時代の価値観

2019年2月4日

田舎言葉丸出しのこの妙な女車は、同じ道をゆく人々の注目を集めます。

行列を見るためにやってきたはずなのに、結局三人は車酔いで撃沈したまま行列は通りすぎ……。三人は恥をかかないように大路に人の気配がなくなってから車だけ帰らせ、自分たちは扇で顔を隠しながら帰ったのでした。

鬼退治の勇敢な武士として知られる彼らの残念なエピソード。のちにこれを語ったという季武は、「どれだけ勇敢な武士とはいっても、牛車の戦は無用なことだ。あれ以来すっかりこりてしまい、車のそばにも寄れない」と言ったとか。

※参考 『今昔物語集』(校注・訳:馬淵和夫・国東文麿・稲垣泰一『新編日本古典文学全集』/小学館 )

久保田さんは、

大江山の鬼退治で有名な武者たちの意外な姿がおもしろく、それを語ったと書かれている季武は、失敗談をおもしろおかしく話せる楽しいひとだったのかも、と想像しました。
鬼退治の話ではそれほど目立っていない貞道ですが、今昔物語ではかっこいい姿を見せます。物静かで思慮深く、盗賊袴垂にもだまされません。貴族のいじわるなからかいを、すずしくうけながし、けれど、いざとなると太刀をぬくのをためらわない。
そんな貞道と、今昔物語に出てくる不思議なきつねからお話はうまれました。平安京の大路を、貞道たちといっしょに歩いたり走ったり、ひとときを楽しんでいただけましたらうれしいです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000026693.html より

と語っています。

有名な鬼退治だけじゃない、頼光四天王の物語です。

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